──それは神話の時代へと遡る。
神王歴608年、その日神々は、主神へ刃を突き立て、苛烈な戦へとその身を堕とした。
神なる者の戦いは混沌を極め、人の世から"太陽"を奪い、"深淵"を生み出した。
奪われた太陽により現れる深淵からは、古による原初の龍が産まれ、悪魔が人の世へ堕とされた。
残された"月"は原初の龍により奪われ、悪魔は龍を主とし力を増していく。その勢力は、人の世へと手を伸ばしてしまった。神々の戦争により生み出された産物は、人の世を守る為に天使を遣わせる。しかし、その結果戦争はより勢いを増してしまった。
そうして、生を司る神と死を司る神が死に、人々は「脆弱な生き物」へと成り果てた。


神王歴623年──、神々の戦争は、龍を打ち倒し、主神を打ち倒した事により終末へと、静かにその時を少しずつ動かしたのである。


新たな暦が生まれし真王歴624年──、
人は恨んだ。
我々は、何もしていない、と声を上げた。
我々は、ただ人の世を営み、神々を信仰していただけだ、と声を上げた。
人々は軈て神々を信仰することをやめてしまった。


「神に祈った結果、得られたのはなんだ？」
「何も得られていない」
「太陽と月が奪われた」
「深淵が産まれた」
「我々を守ってはくれなかった」
「どうして神々を信じられる」


人に信仰されなくなった神は"死ぬ"。
神々のその存在は、人々の信仰によって保たれていたのだ。
その信仰心から成り立つ力で、神は神として在る事はもちろん、自身の手足となる天使を遣う事ができる。


──ならば、より長く生存する為に、削らねばならない物は"削る他あるまい"。




人々は軈て、こう口走る。
「天使を見たんだ、ありゃ、きっと"元"天使だろうよ」
「神になにかする事は出来ない、だがそんな神に遣えていた天使になら」


──何をしても良いんだろう？

─世界─

・魔法
それは人々の営みに決して欠かすことが出来ぬ"奇跡"。神話の時代よりも遥か前から人や天使、悪魔、神々に寄り添い続けた"よすが"であり呪い。個々の命に与えられし奇跡は1つしか顕現せず、2つ以上を持つ者は"元天使"と"天使"、そして"悪魔"だけであった。

・魔力
それは目に見えぬ奇跡。魔力量の残量は個々によって違う気まぐれなもの。
人よりも天使や悪魔の方が魔力は多く、人と同等の魔力を持つのが"元天使"のようだ。

・人
それはあなた達。最も愛おしい存在。

・元天使
神々を信じ、そして捨てられた者。
その生に安寧は無く、時の終わりすら訪れることは無い"穢れ"の象徴。
人を信じ、そして神に裏切られ、殺されてしまう哀れな命。

・天使
元天使との明確な違いは翼の有無。彼らは神々しく神の下僕と呼ぶに相応しい姿をしている。だが、人間は天使を許しはしないだろう。しかし、天使は人を慈しむのだ。

・悪魔
体現するのであれば、彼らは堕落の象徴だ。人間の中には、世界の現状に憂いを持ち、自らの身を悪魔へと捧げ快楽へ堕ちる者もいる。そんな彼らに救いはなく、また悪魔にも救いはない。

・魔物
それは神話の名残。神話の時代により死した命による"魔力の残滓"が具現化した物。
人を襲い、悪魔を食い、天使を殺す存在。
悪魔にとっては同族ではあるが、遠い血縁故に接点は少ないようだ。

・都市
大きな大都市は4つ
「ハ・ルーン」はどこまでものどかな森林と遊牧が広がる大自然の都市。都市、と言うには遠く、森林と言うには近い。そこは人々が互いの手を取り互いを信じる平和が広がっている。元天使への偏見が強く、火炙りで処刑されることも少なくはないようだ。

「アガルタ」は魔法の研究が盛んな繁栄都市、世界の中心とも言えるアガルタは、最も人口の多い場所と言える。
研究内容は「太陽と月の復活」であり、そのための贄として"元天使"を血眼で集めている都市だ。魔法学院が存在しており、優秀な魔法使いはここから産出される。

「ルオン」は海と隣接している都市。物流が盛んであり、アガルタの次に栄えている大都市だ。全ての物資はここへ辿り着く。その中には、命が探している思い出も眠っている。元天使への偏見が少なく、アガルタとは対立している。

「ゲドランタ」アガルタで産出された魔法使い達が多く集まる軍事都市。
世界の中心に位置するゲドランタは今世の真王が座している都市でもある。元天使への弾圧が酷く凄まじい。軍事都市であるが故に「ギルド」というものが生まれ、他の都市や村、街へ"狩り"をすることも少なくはない。